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アクティビストとは?

近年、アクティビストと呼ばれる投資家の活動が活発化し、注目を集めています。2020年にはアクティビストによる株主提案が過去最高を更新し、企業にとって無視できない存在となってきました。f:id:tenshoku66:20230513081947j:image

 今回は、アクティビストとは何かを解説し、さらにアクティビストの実態や最新事例をまとめました。

アクティビストとは何者か?

アクティビストとは、積極的な権利行使を行う株主
アクティビスト(Activist)とは、別名「物言う株主」と呼ばれ、株主としての権利を積極的に行使することで企業に影響力を及ぼそうとする投資家を指します。

アクティビストは、投資先企業の一定割合以上の株式を保有することで、 投資先企業の企業価値向上を大義名分とした株主権利行使を行います。具体的な権利行使としては、経営陣との対話・交渉、株主提案権の行使、各種提案(増配や自社株買いなどの株主還元策、非効率な事業売却や遊休資産の売却、経営陣刷新等)、場合によっては会社提案議案の否決に向けた委任状勧誘等が挙げられます。最近では株式の保有割合が低くても積極的な提言を行うアクティビストも多く見られます。

投資家保護が重視されるアメリカで誕生

アクティビストの活動は、アメリカにおいて先駆けて始まりました。海外諸国、特に米国においては、金融市場における規制が日本よりも進んでおり、投資家保護の観点から開示情報の透明性確保が求められます。投資家保護の観点から、株主の権利が正当化されやすいという環境がアクティビスト誕生の背景としてありました。

例えば、米国株主が一定比率以上を占める企業は、米国証券取引所に対し資本移動についての情報開示が義務付けられます。

また、米国には議決権行使助言会社(例:ISS、グラスルイス)が存在し、株主総会の議案について機関投資家に助言を行い、一定の任意義務を果たしていない企業に対して拒否権を発動することを推奨します。

日本でもアクティビストが活発化
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日本の金融市場は米国、英国、シンガポール、香港等に並ぶ規模を誇り、海外投資家にとっても魅力的な投資対象ですが、海外投資家にとって懸念事項となるのが、日本企業による株主の権利の軽視です。

近年、海外投資家は日本企業に対しても、海外水準の株主の権利を要求するようになり、アクティビストが日本でも存在感を発揮するようになりました。

しかし、海外投資家が要求を行うようになった当初、日本企業は要求に対し批判的であり、アクティビスト対策として政策保有株の持ち合いなどの買収防衛策を講じる企業が多数ありました。こうした経緯から、株主提案権の行使やアクティビストが、ネガティブな印象を持つようになりました。なお、近年は日本企業でも一般投資家の権利尊重の観点から買収防衛策は廃止されており、株主の権利を重視する風潮が広がってきているという傾向があります。

3パターンのアクティビスト

アクティビストと言っても、権利行使の動機や要求の内容によって複数の種類に分類することができます。以下、3種類のアクティビストについて見ていきましょう。

①能動的アクティビスト

能動的アクティビストとは、 自ら積極的に経営陣と対話し要求を突きつける投資家のことを指します。株主の利益を最大化することで、ファンドのポートフォリオに含まれる株式価値を引き上げることを目的とします。

これらの投資家は、少数の企業に集中的に投資し、高い株式保有比率と影響力を持つことで、経営者と対話しながら株価重視の経営政策の実現を迫ります。

能動的アクティビストは私募のファンドに多いです。

②受動的アクティビスト

受動的アクティビストとは、受動的な権利行使を行う投資家のことを指します。

ファンドの投資スタイルによる制約から株式を売却できず、議決権に取り組まざるを得ない場合や、制度的変更によっていわば外部から強制されて議決権行使を行わざるを得ない場合が多いのが特徴です。

受動的アクティビストは、年金基金投資信託に多いです。

③社会運動型アクティビスト(SRIアクティビスト)

投資先企業の社会的責任の遂行程度を高めるための要求を行うアクティビストです。社会運動型アクティビストは、能動型アクティビストと手法の面では似ていますが、目的が直接的な投資収益の獲得ではない点が大きな違いです。

社会的責任投資(Socially Responsible Investment, SRI)は、日本においてもその影響力を拡大しつつあり、 SRIアクティビストの活動も活発化しています。

社会運動型アクティビスト

(SRIアクティビスト) による投資活動
社会的責任の達成を目的とした投資活動には以下の3種類があり、アクティビストと呼ばれる活動は③株式行動です。

①コミュニティ投資(Community Development Investment)

コミュニティ開発金融機関(Community Development Financial Institution)と呼ばれる開発金融機関に投融資して、地域の活性化・社会貢献につなげようとする投資行動。

②社会的スクリーン投資(Social Screen Investment)

別名、「スクリーニング」。投資に際して会社を評価する際に財務面での評価に加えて、倫理面、社会面、環境面での評価(「社会的スクリーン」)を加味する投資手法。

③株主行動(Shareholder Activism)

株主の立場から投資した企業に社会的問題への対処や環境対応などを、様々な手段を用いて経営陣に働きかける行動。