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「ファンド・オブ・ファンズ」のメリット、デメリット

「ファンド・オブ・ファンズ」とは、複数の投資信託をパッケージにした投資信託のことで、1つのファンドに投資することで実質的に複数の投資信託分散投資できます。f:id:tenshoku66:20230517204336j:image

「ファンド・オブ・ファンズ」の長所4つ

①分散効果

ファンド・オブ・ファンズの長所のひとつは、ポートフォリオを多様化することによる分散効果の獲得である。
 分散効果とは、リスク調整後リターンの向上であり、運用効率の改善である。市場環境に左右されない絶対リターンを求めるヘッジファンドも、常に狙い通りの成果を享受し続けることは容易ではない。従来型の伝統的投資スタイル同様に、スタイル分散・投資対象分散は、ヘッジファンド投資においても有効である。

②投資プロセスのアウトソース

第2の長所は、単独では容易でないシングル・ファンドの選定、デュー・デリジェンスポートフォリオの構築、投資後のモニタリングという一連のヘッジファンド投資プロセスを、投資家が一定のコストを払って、専門家にアウトソースできることにある。
 投資家のために、数多くのシングル・ヘッジファンドのユニバースからヘッジファンドによるポートフォリオを構築し、運用モニタリングを行う専門家をゲートキーパー※と総称する。日本では、ファンド・オブ・ファンズ・マネジャーをゲートキーパーと呼ぶこともある。
 ※ヘッジファンド投資を行う投資家のために、個別ファンドを評価し、ポートフォリオ組成を行う専門家。

③優良ファンドの投資枠確保

第3の長所は、キャパシティの制約から“一見の投資家”による資金投資を制限している、クローズ済の優良マネジャーに対する投資枠を確保できることがある点である。有力ファンド・オブ・ファンズ・マネジャーは、その多年にわたる投資家としてのリレーションシップにより優良マネジャーからも一目置かれる場合が少なくない。
 そのようなヘッジファンド業界の至宝ともいえる一部のマネジャーに、いきなりアプローチしても門戸は開放されないのだが、ファンド・オブ・ファンズというビークルを通すことによって、アロケートする道が拓かれる場合もある。ファンド・オブ・ファンズ・マネジャーが、どの程度クローズ済ファンドをポートフォリオに入れているかということも、ひとつの評価基準である。

④小口でも分散効果

第4の長所は、小口資金でも分散効果が得られることである。最低投資金額の大きなヘッジファンドで最適ポートフォリオを構築するには大きな資金が必要だが、ファンド・オブ・ファンズを利用すればその問題は解決できる

「ファンド・オブ・ファンズ」の短所3つ

①透明性

ファンド・オブ・ファンズの短所は、第1に透明性である。数々のヘッジファンド破綻や、機関投資家の本格参入を機に、ヘッジファンド・マネジャーの投資家向け情報開示姿勢は急速に改善してきたが、運用の性格も影響して、必ずしも十分とはいえない。
投資戦略によっては、
①マーケット・インパクトを通じたパフォーマンス悪化を懸念して情報開示を躊躇するケース
②際限ない情報開示要求がインフラ整備を通じたコスト増加とパフォーマンス悪化につながると懸念するケース
 が多い。従来の、説明責任よりも結果責任というマネジャーの意識はずいぶん改善されてきたが、それでも優良マネジャーをめぐる投資家やファンド・オブ・ファンズ・マネジャーの争奪戦は激化しており、自信のあるマネジャーほど売り手市場である。
 しかし、ファンド・オブ・ファンズの中には、シングル・マネジャーとの格別な関係を背景に、突っ込んだ情報開示を受け、投資家に対しても一定の条件の下でその情報を開示する場合もある。

流動性

第2の短所は、流動性である。ファンド・オブ・ファンズの投資先であるシングル・ファンド以上の解約条件を得ることはそもそも不可能であることを思えば、流動性の不足は容易に類推できるだろう。
 さらに言えば、優良なシングル・ファンドほど流動性が厳しくなる傾向にあるため、期待リターンを高める努力と流動性改善の努力は、えてして相反する傾向にある。
 流動性(解約条件)を優先してファンド・オブ・ファンズを選別投資した結果、本来期待したリターンを得ることができなかったという本末転倒のケースが、特に流動性を重視するわが国金融機関の間で過去に散見された。
 かつて、シングル・マネジャーと密接な関係を有するファンド・オブ・ファンズ・マネジャーの中には、サイドレターなどで優遇条件を得ているケースもあったが、公平性の確保という観点では、マネージド・アカウント等を利用する仕組みをとらない限り困難である。

③コスト

第3の短所は、コストである。シングル・ファンドで管理報酬と成功報酬が課された上に、2階に当たるファンド・オブ・ファンズでも別途運用報酬が徴求されるからである。
 したがって、ファンド・オブ・ファンズによって得られる長所(付加価値)に見合うコストであると判断できる水準か、ゲートキーパーへのアウトソースを行わないで自らヘッジファンドポートフォリオ運営を行う場合と比べて合理的か、という観点から検討する必要がある。f:id:tenshoku66:20230517204348j:image