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最新アクティビスト事例5選

アクティビストによって仕掛けられたTOBとそれに対する企業の対応、その後のTOBの成否など、実際にアクティビストが行った株主行動の具体例を見ていきましょう。f:id:tenshoku66:20230516031006j:image

旧村上系ファンド事例①:シティインデックスイレブンスによる東芝機械のTOB(2020年1月)
【概要】

TOB実施アクティビスト:シティインデックスイレブンス
TOB対象企業:東芝機械
実施期間:2020年1月21日~2020年3月4日
目的:株主価値の向上
ファンドによる株式保有割合:12.75%
結果:TOB撤回により不成立
2020年1月21日、旧村上ファンド系のシティインデックスイレブンスは、東証1部上場の工作機械大手、東芝機械に対する株式公開買付け(TOB)を実施すると発表しました。

TOBを実施するのは旧村上ファンド系3社でした。同3社は当時、東芝機械株の12.75%を保有しており、最大259億円を投じ、東芝機械株の43.82%の取得を目指しました。TOBは1月21日~3月4日までで、価格は1株3,456円、追加の買い付け株数が14.5%に満たない場合は成立しない、という条件でした。

この敵対的TOBに対し東芝機械は同日、他の既存株主に新株予約権を割り当て、買収者の保有比率を引き下げる買収防衛策の手続きに入りました。これに対しシティ側は、TOBの狙いを「株主価値の向上と自己資本利益率ROE)向上を実現するため」とし、東芝機械の対応を「経営陣の保身」と批判しました。

2020年3月27日に開かれた臨時株主総会において新株予約権の発行による買収防衛策が可決され、防衛策が承認された場合はTOBを直ちに撤回すると表明していた旧村上ファンド側はTOBを撤回しました。

村上ファンド系事例②:島忠TOBにおけるシティインデックスイレブンスの存在感(2020年10月)
【概要】

TOB実施アクティビスト:DCMホールディングスニトリ
TOB対象企業:島忠
実施期間:2020年10月2日~2020年11月13日
結果:DCMによる買収は不成立、ニトリによる買収が成立
同じく旧村上ファンド系のシティインデックスイレブンスが関与したTOBとして、島忠に対するTOBが挙げられます。

このTOBを仕掛けたのはDCMホールディングスおよびニトリであり、シティインデックスイレブンスはTOBを仕掛けた訳ではありませんが、島忠の株主としてTOBの展開を左右する存在感を発揮しました。この事例は、アクティビストを株主として持つ企業を巡るTOBの場合に起こり得る事態として参考になります。

2020年10月2日、ホームセンター大手のDCMホールディングスが同じくホームセンター大手、島忠に対し1株4200円でTOBを実施すると発表しました。

シティインデックスイレブンスは2020年10月17日時点で島忠株を5.75%保有していましたが、DCMによる買い付けには応じず、20日までに8.38%まで買い増すことで、より高い買取価格を追求する構えを見せました。

DCMによる買い付けが進む中、2020年10月29日にニトリが1株5500円を設定し、DCMの設定した価格を上回る価格でのTOBを発表、DCMとニトリによるTOB合戦となりました。

最終的には2020年11月13日に島忠がニトリによる買収案に合意し、TOBが成立しました。そのため、島忠株を保有していたシティインデックスイレブンスは引き上げた株価で保有株式を売却し利益を得る結果となりました。

村上ファンド系事例③:廣済堂MBOに対抗、レノによる対抗TOB(2019年3月)
【概要】

TOB実施アクティビスト:レノ
TOB対象企業:廣済堂
実施期間:2019年3月22日~2019年4月18日
目的:株主価値の向上
ファンドによる株式保有割合:13.47%
結果:不成立
アクティビストファンドが投資先の企業経営陣によるMBO(Managing Buyout)に対抗しTOBを仕掛けたという事例がレノによる廣済堂TOBの事例です。

MBO(Managing Buyout)とは?
経営陣による買収を指す。企業の経営陣が既存株主から株式を買い取ることで経営権を取得することを目的とする。

2019年1月18日、東証1部上場の印刷業中堅企業、廣済堂の経営陣が米投資ファンドベインキャピタルの支援を受け、非公開化を目的としたMBO(Managing Buyout)を開始しました。

それに対し、 旧村上ファンド系のレノは株式の買い付けを行い、株価を引き上げる行動に出ました。その結果、TOBは期間が延長され、買付価格の引き上げが決定されました。

それでもなお、レノ側は「既存株主に対して十分な株式価値向上の機会が提供されていない」と指摘し、 旧村上ファンド系レノのパートナー企業である南青山不動産が対抗TOBを実施しました。

当時、レノおよび南青山不動産は廣済堂株式の13.47%を保有しており、対抗TOBの買付価格は、750円で、MBOの買付価格(610円、その後700円に引き上げ)と比較して50円高く設定しました。

しかし、最終的には買付株数が予定数に達せず、TOBは不成立に終わりました。

グローバルヘッジファンド事例①:香港系投資会社オアシス・マネジメントによる東京ドームTOB(2020年12月)
【概要】

TOB実施アクティビスト:オアシス・マネジメント
TOB対象企業:東京ドーム
実施期間:2020年12月17日~11月27日
目的:株主価値の向上
ファンドによる株式保有割合:9.61%
結果:三井不動産によるTOBが成立(オアシス・マネジメントによるTOBは不成立)
近年では、海外のアクティビストが日本で存在感を高めてきています。最近の事例では、香港系投資会社オアシス・マネジメントによる東京ドームTOBが挙げられます。

東京ドームが2020年12月17日に都内で開いた臨時株主総会で、 大株主のオアシス・マネジメントが長岡勤社長らの解任を求めた株主提案が否決されました。

オアシスは2020年1月時点で、東京ドーム株の9.61%を保有しており、経営陣が非効率な運営を続け、オアシスが示す業務改善策についても対話を拒否していると主張しました。それに対し、東京ドーム側は、長岡氏ら3人は企業価値の向上などに貢献してきた経験や実績があり、解任した場合は価値を著しく損なうと反論しました。

上記に伴い、 ホワイトナイトとして三井不動産が11月30日から完全子会社化に向けたTOBを実施し、オアシスも応募する意向を示しました。

三井不動産は2021年1月19日、東京ドームに対するTOBに84.8%分の応募があり、TOBが成立したと発表しました。三井不動産は手続きを経て東京ドームを完全子会社化した後、20%を読売新聞グループ本社に売却、将来的な再開発を視野に、東京ドーム一帯の施設や運営に参画し集客力を高めるとしました。

グローバルヘッジファンド事例②:米投資ファンドサーベラス・グループによる西武ホールディングスTOB(2005年10月)
【概要】

TOB実施アクティビストファンド:サーベラス・グループ
TOB対象企業:西武ホールディングス
実施期間:2013年3月11日~2013年4月23日
目的:再上場を巡る意見の対立
ファンドによる株式保有割合:32.4%
結果:不成立
最近の事例とともに、さらに時期を遡った過去の事例をご紹介します。

2004年、西武HDの前身の西武鉄道有価証券報告書の虚偽記載で上場廃止に追い込まれた。その翌年、西武に支援の手をさしのべたのが米投資ファンドサーベラス・グループ(以下、サーベラス)でした。サーベラスは2006年に約1000億円を出資、株式の約30%を保有する大株主となりました。

西武鉄道サーベラスは当初、ホテル事業の支援など経営面でも協力していたが、再上場の仕方などを巡ってすれ違いが生じ始めます。

2013年にはサーベラスが西武HDに対しTOB(株式公開買付け)を実施しました。その結果、目標には届かなかったものの、サーベラスによる株式保有比率は35.45%に高まり、サーベラスは株主としての影響力を高めた結果、西武HDに対しプロ野球球団の売却やローカル線の廃線などを求めました。

その後、西武HDの業績が回復するとともに対立は次第に弱まり、2014年に西武HDは再上場を果たします。一方、サーベラスは段階的に保有株を売却し、2017年8月にサーベラス持分の西武HD株を全株売却することで長期保有に終止符を打りました。

一般的に、ファンドは投資を始めてから3~5年前後で株式を売却するケースが多いですが、この案件は 投資期間が特に長いのが特徴です。