アセマネ業界研究📊

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アクティビスト対策の最新動向

アクティビストが活発化する中で、企業側がどう対応するのか探るため、アクティビストのターゲットとなる企業の特徴を把握し、対抗策の実現可能性を検討してみましょう。f:id:tenshoku66:20230516030407j:image

狙われる企業の特徴

アクティビストが狙うターゲット企業の特徴としては以下が挙げられます。

有利子負債よりも現預金の方が多い(キャッシュ・リッチ)
株価が低迷している
コーポレート・ガバナンスの水準が低い
経営陣の質が低い
優良資産を多く持つ

アクティビストに対抗するのは至難の業

ここ数年、アクティビストの活動がより積極的になる傾向があり、企業側は対応を迫られています。

対応策の一つとして、 企業側がアクティビストを排除するため、TOBによる非上場化を行うケースが多く見られるようになりました。

しかしその場合、アクティビストは対抗TOBを仕掛けて買収価格を吊り上げ、高い価格で売却することで莫大な利益を狙うという可能性があります。

さらに、一般投資家が、アクティビストがTOBに際して株価を吊り上げることで利益を得ようと考えるようになりました。したがって、対抗策としてのTOBによる非上場化は、アクティビストにより買収価格が異常に吊り上げられるという可能性が高く、企業側にとってはリスクが高い選択です。

TOB(Take Over Bid)とは?f:id:tenshoku66:20230516030719j:image

日本語では、「株式公開買い付け」。上場企業が発行する株式を、買い取る価格や株数を契約により決定することで、市場外で買い付けること。主に上場企業の買収や経営実権の取得のための手段として使われる。株式発行企業の経営陣の合意を得ているか否かによって、友好的TOBと敵対的TOBの2種類がある。

アクティビストによるTOBに対する対抗策として、もう一つ考えられるのが、 ホワイトナイトによるTOBを要請することです。企業側が合意できない条件で敵対的買収者によって買収されるより、友好的な買収者に自社の買収を要請し、よりよい条件によるTOBを実現するという手法が考えられます。

ホワイトナイトとは?f:id:tenshoku66:20230516030729j:image

友好的TOBを行う買収者を指す。敵対的TOBを仕掛けられた企業は、対抗策として、友好的な買収者による買収に合意することでよりよい条件での買収を実現できる。

アクティビストの実態

アクティビストによる要求として多いものを、いくつか紹介します。能動的アクティビストと受動的アクティビストの違い、アクティビストの目的によって要求は多種多様です。

定款変更による買収防衛策の撤廃
定款変更による役員報酬の引き下げ
増配(配当金の引上げ)要求
取締役の選任・解任による取締役の送り込み
株主総会において決議に対する不賛同(受動的アクティビストに多い)
敵対的TOB・対抗TOB、公開買付中の株式の買付け
声明の発表(ウェブサイト開設による)

国内で活動する主要アクティビスト紹介

日本で存在感を発揮する主要アクティビストの一覧は以下の通りです。各ファンドが投資先企業に対してどんな要求をしているか注目すると、アクティビストの最新動向が見えてきます。

村上ファンドf:id:tenshoku66:20230516030744j:image

村上ファンドとは、通商産業省の元官僚だった村上世彰氏が1999年に設立したアクティビストファンドです。現在でも同氏または同ファンドの出身者が実質的に率いる投資会社を旧村上ファンド系と称し、近年存在感を高めています。

レノ
シティインデックスイレブンス
南青山不動産
C&Iホールディングス
エフィッシモ・キャピタル・マネジメント

グローバルヘッジファンドf:id:tenshoku66:20230516030750j:image

近年では以下のような海外のアクティビストファンドが日本企業に投資を行い、アクティビストとして要求を行うケースが多く見られます。

オアシス・マネジメント (Oasis Management, 香港)
サーベラス・グループ (Cerberus Capital Management, 米)
シルチェスター・インターナショナル・インベスターズ (Silchester International Investors, 英)
ダルトン・インベストメンツ(Dalton Investments, 米)
スティール・パートナーズ(Steel Partners, 米)
ランデス・インベスト・パートナーズ(Brandes Investment Partners, 米)
フルサ・オルタナティブ・ストラテジーズ(米)
セーフ・ハーバー・マスター・ファンド(Safe Harbor Master Fund, 米)
サード・ポイント(Third Point, 米)
エリオット・マネジメント(Eliot Management, 米)
トライアン・パートナーズ(Trian Partners, 米)
アセット・バリュー・インベスターズ(Asset Value Investors, AVI, 英)

その他アクティビストファンド
日本に拠点を置くアクティビストファンドも少数ですが、存在します。

ストラテジックキャピタル(Strategic Capital, 日本)

株主提案や敵対的TOBを行ったことがある事業会社

アクティビストファンドではないものの、投資先企業に対し株主提案や敵対的TOBをかけるなど、積極的な提案や行動をとったことがある事業会社を一部紹介します。

伊藤忠商事(2019年:対デサントTOB実施, 2020年:対ファミリーマートTOB実施)
光通信(2020年:対サンセイのTOB実施)
楽天(2005-2009年:対TBSのTOB実施)
IDEC株式会社(2007年:対モリテックスの取締役・監査役選任案提出)